生命の発露
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生命の発露
我々はこの世界の上で生きている。表象の世界を脳の上に描き、
またその表象の上に足をつけている。我々はこの大地の上に立っている。


 ● 幾万の生き物

 この大地には幾千、幾万の種があり、命がある。
 自然は、多くの子供もこの大地で遊ばせる。
                              
  雑誌『ニュートン』より


 
自然は、過去の出来事の悲喜こもごもを引きずらない
 自然には、陰気さは似合わない。
 自然は常に現在の喜びを伝える。

 自然は、この世界に対処した。 この世界に対処したからこそ、自然は個体
 (個々の生命)に生と死を与えたように見える。

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● 自然と脳@

 仮にこの世界に生と死をもつ生命がなければ、あらゆるものは物質のごとく
 変形・変化するだけの世界になる。
 それゆえ、この世界を表象として捉える意味もなかったに違いない。

 とにもかくにも
自然は脳を生み出した
 この世界を表象の世界から眺めるという事が、もし一切なかったならば
 つまり目を有する生命が一つもなかったならば、世界のあらゆるものは
 押し合いへし合い、あらゆるものが同時に存在したに違いない。

 目を開いた生命の存在を前提にして、この世界は、時間と空間と因果律の
 適用を受けた世界を創作したのである。
 その世界を我々は、脳の表象上に描くことで、その世界はまさに開いた。

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 ● 自然と脳A

 盲目な衝動である意志を基調とした世界に、自然は目を生み出した。
 それにより脳の表象の上に、多種多様な現象を順番に表現する事が可能となり
 広がりを持たせることで、多様な現象を同時に捉えることが可能となった。

 脳の登場が、この世界を新たな側面から捉え、1つの世界を増やした。 
 たくさんある側面の
1つの捉え方として、この世界は現われた。

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● 因果の世界、そして生命

 この世界は
因果の世界である。
 あらゆる結果には、その原因がある。

 あらゆる変化の前には、それに伴う変化がある。(因果律)
 この世界の物質が変化するのは、作用によってであって時間や空間に
 よってではない。

 この世界の衝動を、表象の世界の上で描くとき、つまり時間と空間のルールが
 適用された世界で描くときに、自由に描けるわけではなかった。
 制約を伴った。そのもっとも根本的な制約が因果律である。
 
 我々の表象の上では、物質は時間と空間を結合した形で現われ、そうして
 作用によってのみ変形・変化する。
 当然、この世界で命を有する生命も、この因果には無縁ではいられない。
 植物も動物においても、因果の世界に縛られる。

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● 開眼と表象の世界

 生命は目を開いた。
 自然は目をもたらした。
 目が開き、そして時間と空間、因果律が適用された世界に生きることになった。

 その世界の中で、生きとし生けるものは生まれては死ぬ。
 肉体はこの世界で滅び、そうしてまた新たな命が生まれ、育まれる。
 命ある者は、それらの生と死を、この表象の世界の上で眺める。

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● 命の尊厳@

 どのような人間の一生であれ、その死に接した時に人々は
手を合わせる
 至らない人生の人間の死であったとしても、例外ではない。
 葬式に参列した時に感じる、あのなんともいいがたい感じがある。
 口では表現しにくいものを誰もが感じる。

 どのような人間の生涯であっても、その死に接すれば人々は手を合わせる。
 なぜなら、その人の死に個人としての死を見るのではないからだ。
 人々は、そこに生命としての
人間の死を見ているのだ。
 人々は、そこに
命の尊厳を感じ取っている。

 どれだけ浮かれていたとしても、人間の死を目前にした時、そのような気分は
 あっという間に消えさる。
 なんとも言えない感情があたりに伝播する。

 どのような国々であっても、葬式は厳かに行われるものである。
 人間は、他人の死に接した時にあることを感じ取る。
 
表象の世界が幕を閉じるのを感じ取るのだ。

 1つの生命がなくなっても、あちらの生き物にも、こちらにも生き物にも
 その脳の中には表象の世界が確かに存在はする。
 なれども、生命の1つの死が表象の世界が幕が閉じることを暗に知らせる。
 確かに、その時、
世界は閉じたのだ。

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● 命の尊厳A

 表象の世界と自然が織り成すこの世界。
 生によって表象の世界が与えられ、死によって表象の世界が失われる。
 我々は、人の死に接するとき、その奥に自然が目を宿すに至ったまでの過程に
 対する畏怖を感じ取る。

 我々は、そこにどんな意味合いがあるのかを真に理解できない。
 
人間の知性など、頼りないものである。

 しかし、それが何かはわからぬとも、人々は、そこに何かを感じ取る。
 
生き物としての根源的な何かを! そう生命の発露を。

 人類の長い歴史の中で、優れた者たちによって多くの教えが降ろされた。
 それらの教えは、まさに上記に述べた根源的な何かに対するものである。
 それは生と死に関わるものであり、またこの世界の真理に対するものでもある。

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● 生命の発露

 他人の死に接するときに、我々はそこに何かを感じ取る。
 その何かを求めて、人々常に求めてきた。
 あらゆる探究の根源もここにつながる。

 人類が生み出した天才達によって、人々はわずかにそれらの意味に
 触れることができる。
 古今東西に優れた教えが降ろされた。
 なれど人間でなくても、動物達も仲間の死に対して何かを感じている。

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● 因縁因果と生命、そして人間@

 この世界の物質が作用によって変形・変化するように、また生命もその行動
 も因果の系の上にあり、縛られている。
 動物も何らかの原因があって行動する。
 人間は、自分達の行動が自由だと盲信している。
 だが人間も動物の行動も先の先まで因果で結ばれている。

 それを人間も無意識であっても理解している。
 なぜなら、何らかの犯罪が起これば、その犯人には、その行動を起こすだけの
 動機(理由)があったはずだと誰もが最初にそう思うからである。

 あらゆる事が因果によって先の先までもつながっている。
 確かに運命は変えがたい。
 本当に優れた知性を有する者がみれば、先の先まで見れるやも知れない。
 なれども、どのように優れた人間でも同じ人間である。
 人間には確かに限界がある。
 それゆえ、人間の一生は、先の見えぬ真っ暗の道を手探りで進む道となる。

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 ● 因縁因果と生命、そして人間A

 人間の外側には確かに深い闇がある。
 また人間の内側も闇に包まれている。
 だが人間がその暗き道を、手探りでありながらも力強く歩を進めるその時
 
人間の内面に明かりを灯す事ができる。

 我々には生があり、そして死が訪れる。
 死によって肉体を失い、同時に表象の世界を失う。
 死により、我々は認識そのものを失う。
 
肉体は、我々の知性の拠り所であり、知性の必須の前提である。

 だがまた死により、時間と空間、因果律に縛られない世界がそこにある。
 古代人が死の世界の先に、生を超えうる世界を見たのもそれが故である。

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● 内面の真理、そして釈尊

 物質は、作用によって変形・変化する。
 もちろん、生命もこの作用の影響下にある。
 何の因果かは知らぬが、その結果には必ず原因がある。

 2500年以上も前に天才・釈尊によってこの世界の真理が知らされた。 
 人間はそのような世界に生きている。

 この作用は、人間の外側に働きかけるだけではない。
 
人間の内面にも押し寄せてくる

 人間の内面で悪い事を思えば、悪を惹きつける。
 人間の内面で良い事を思えば、善をひきつける。


 自然は、この世界に上手に対処する。
 同じように人間もこの自然にうまく対処できるだろうか?
 人間もまた自然から生まれし子供であるからそれが可能であると言いたいが
 誰もが、そうだといえなかった。

 だが人間も対処は可能である。
 天才・
釈尊その道を切り開いてくれたからだ。
 因縁因果、諸行無常、諸法無我、一切皆苦・・・・・
         
            人類から生まれた
最高傑作 釈尊

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● 開眼と表象の世界@

 この世界の個体の中のものに生と死が与えられた。
 それらの個体の中から目を開いた者達が現われた。
 この世界のいかなる生命でも良い、その1つの生命がこの世界で目を開いた
 その刹那、この表象の世界も誕生した。

 個々の生命の中の小さいなゼリー状(=脳)の物体の中に表象の世界が
 広がり、個体はその世界の中を自由自在に動く。
 脳の上に描かれる表象の世界は、この世界で起こる因果の系を見事に描く。

 個々の生命の上で描かれる、これまた個々の表象の中で描かれる現象は
 
互いに矛盾する事なく、共通に因果の系を描く。

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 ● 開眼と表象の世界A

 消滅も生成もしない物質の中ではなく、生と死を有する個体(生命)の中にこそ
 表象の世界がもたらされた事実。
 生と死を有する生き物の上に表象の世界がもたらされた事実。

 生と死があるからこそ表象の世界はもたらされたのか??
 いずれ死により肉体を失い、表象の世界を失うのを前提して、初めてそのような
 生命に表象の世界が与えられたのか?

 とにもかくにも、なにものであろうと、この世界において最初に目を開いたと
 いうその出来事は、とてつもない大きな意味がある。
 その時にまさに世界が広がったのである。

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● 作用の世界、生と死の意味

 確かに表象の世界では、様々な作用を捉え、様々な個体の生と死を表現する。
 それらの移り行く世界を見ている者達も、いずれ死が訪れて朽ち果てる。
 生まれる者がいるから、死ぬ者がいる。
 死ぬ者がいるから、生まれる者がいる。


 この大地から消えいく者達の中から、表象の世界が立ち現れてきた。

 もし仮に、この世界の中で、死ぬ者がいなければ、それゆえ生まれる者も
 いないであろう。
 さらには我々の脳は、個体の生死をその表象の上に捉えないであろう。
 我々の脳の上の表象が捉えるのは、ただひたすら物質の作用のみに限定され
 この世界は無機物が互いに押しめきひしめきあうだけの世界として表現された
 に違いない。

 なれども、我々が眺めるこの世界の上には無数の個体が発見でき、その個体
 は生と死を繰り返している。
 この世界が物質のみの世界ではないことを捉えている。

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● 個人の死と表象の世界

 表象の世界では、様々な現象が次々と起こる。
 無数の因果の系が互いに絡み合いながら次の事象を決定していく。
 目を有する生き物は、それらの因果の系を、表象の世界を上に見事に描く。

 もし、この世界が単なる作用のみの説明で片をつけれる世界なのだとしたら
 そもそも自然は、表象を有する生命をもたらしはすまい。
 
 しかし、目をつくり表象の世界をもたらした事に、人間が意義を見出そうとしても
 目をもった生命にも容赦なくこの世界は押し迫り、この世界の因果の中に
 飲み込み、それらの者達に死を与える。
 そうして表象の世界を奪い、跡形も残させない。

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● 世界と自然と人間と

 自然は、命を紡ぐことにより、その生命が失われても、新たな生命が、
 表象の世界を作り上げ、引き継ぐ。
 それにより、表象の世界を存続させる。

 自然から見れば、自然の上の個々の生命の命などどうでも良いのか知れぬ。
 なれど、個々の生命からみれば、死は確かに世界を閉じることを意味する。
 表象の世界を失うことであり、つまり世界を失うことである。

 その自然の生命の1つである人間もまた同様である。
 
人間は、そのような世界の上で生きている
 確かに、我々の知性ではこの世界を捉えきれない。
 自然は、無邪気に真理を展開しているのに、それすらも人間には、
 わずかしか捉えられない。


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 ● 生命の発露

 なれどまた、人間においてその表象に捉われない世界を求める事に至った。
 それが
芸術であり信仰であり学問の道である。

 いずれも、眼前の表象の世界を越えて、その奥にあるものに何ものかを
 目指して、その方向へと向かって進む道である。

 我々はこの世界の上で生きている。
 脳の中で、表象の世界を描き、また、その表象の上に足をつけている。
 我々は、この大地の上に立っている。

 今、この瞬間も生きている。この世界で生きている。 
 たとえ、この道の先に何があるか見えずとも我々は手探りながら前へ進む。
 そこにこそ
生命の発露があり、つまりは人間の可能性がある。
                  フリードリヒ・ニーチェ
                 
                           ツァラトゥストラはかく語りき』より
 ” おお、人間よ!しかと聞け!
   深い
真夜中は何を語るのか?

  「 私は眠りに眠り、深い夢から、いま目が覚めた。
    この世は深い、『
』 が考えたよりもさらに深い。
    この世の嘆きは深い。

    しかし喜びは、断腸の悲しみよりも深い。
    嘆きの声は言う、『
終わってくれ!』と。
    しかし、全ての喜びは
永遠を欲してやまぬ
    
深い、深い永遠を欲してやまぬ!」 ”

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